切ない想い出のショコラのケーキ
さて、もう充分にチョコレートは、、と思っていましたが、、、
私の中で2月には特別な切ない想い出があるので
そのことを忘れないためにも、このケーキを作りたい・・・と思っています。
パン・ド・ショコラ
卵とバターとチョコレート、グラニュー糖と、ほんのちょっとの粉のみのシンプルなケーキですが、実はとっても難易度の高い、奥の深いケーキです。
少し長くなってしまいますが、その想い出とは・・・
今から11年前の2000年の2月。
その頃まで私は、お菓子の本を見ては購入し、美味しそうなのを選んで自分なりに作っていただけでした。
でも、あるとき友人から借りた1冊の本をみて、その先生のフランス菓子の対する熱い想いと、その想いを込めて作られたお菓子の数々を目にして、何とも言えない感動を受けたのでした。
早速すぐに本を見ていくつかのケーキを作ってみたところ、特に果物の素材が生かされていて、どれも美味しくて感激したのです。
さらに調べてみると、その先生はアトリエを持っていらして、教えている、しかも渋谷で・・・
習ってみたい!! との想いが私の中で大きく大きく膨らんでしまいました。
即問い合わせして、スタッフの方から説明をお聞きし、申し込んでレッスンの初日も決まりました。
本格的に、フランス菓子を習うのは初めてだったので、ワクワクしてその日を待ちわびていたところ、前々日の夜に、先生ご本人からお電話をいただきました。
先生はとっても優しく、わたしのお菓子歴などを尋ねられ、「ご一緒に楽しく美味しいお菓子を作っていきましょうね!お会いできるのを楽しみにしています。」
とおっしゃって下さり、電話を切りました。
私はますます2日後が楽しみになりました。
そして、次の日の朝、私は早朝から仕事に入っていたのですが、後から仕事に入った同僚の友人が、
「昨日の夜、渋谷のマンションで火事があって、有名なお菓子の先生が亡くなったんだって!ニュースでやってたよ!」 と、、、。
いやな予感・・・
まさか、違うよね・・・
えっ、でも渋谷? 女の先生? 名前は?
でも確かめるために発した先生の名前を聞いて、同僚は そんな名前ではなかったような、、と。
でも、なんかすっきりしない気持ち。。。
その日は仕事も上の空で、即家に帰ってニュースにかじりついたのを覚えています。
火事で亡くなったのは、やはり先生でした。
ニュースでは本名で伝えていましたが、、、
『アトリエ・プチガトー』を主催されていて、当時TVキューピー3分クッキングでお菓子も担当されていた
加藤久美子先生 でした。
2000年の2月19日のことでした。
マンションで一人暮らしをされていて、枕元に山と積まれたお菓子の本に、スタンドの灯が引火したんだそうです。。。 (先生のお菓子に対する情熱がかえって・・・)
前日の先生の優しいお声が、それから長いこと私の耳を離れませんでした。
一度もお会いすることがなかった先生ですが、あの本から受けた感動が今、
その後イルプルに通う礎を作ってくれたんだと思っています。
このパン・ド・ショコラは、
先生にとっても難易度が高く、思考錯誤を繰り返して、ようやくフランスの研修時代のシェフから認めていただいた想い出深いケーキだ、と本の中で書いておられます。
贅沢な材料をたっぷり使っているのですが、重くなく、口にいれるととろけていくような舌ざわりを持っています。
これでもたぶん、先生の合格点はいただけないのでは・・・と思いますが、
あれからフランス菓子を学ばせていただいたお陰で、少しは先生の理想の仕上がりに近ずけたかな?
2月になると作る、切ない想い出のお菓子です。
先生にありがとうございます、との想いを込めて。
もう、あれから11年。。。